1億溶かしたマナオのマナマナマネー考察

株で1億稼いで1億溶かしたサラリーマン、マナオの再起をかけた株と考察のブログ

ハロプロとAKB、ビジネス戦略の比較

サラリーマン投資家のマナオです。
本日は株式市場とは関係が薄い、表題のアイドル運営企業の戦略の違いについての考察です。

以前、アノマリーについて記事にした際、
アイドルが流行しているときは景気が低迷している傾向にあり、景気が良くなるとアイドル人気が下火になると書きました。
そこでアイドル業界とアノマリーとの関連性を調べてみましたが結論は出ませんでした。

しかしながらアイドルの老舗ハロプロと新興のベンチャー企業ともいうべきAKB系アイドルは、ビジネスとしてとても面白い形態をとっていると感じましたので記事にしてみます。


AKBの戦略

AKB運営のAKSの戦略は「所有しない」戦略といえるでしょう。
通常、アイドルグループは皆が同じ事務所に所属しています。
しかしながらAKBの有名アイドルのほとんどが太田プロやオスカー、ホリプロなど所属事務所が異なっています。
これは非常に合理的な戦略の1つであるといえます。

アイドルビジネスにおいてアイドルは人件費という名の固定費といえます。
数で勝負するAKB系アイドルにおいて、アイドルを所有しないことはリスク分散であると共に多数の利害関係者を作るというスキームも持ちます。

AKBは一社独占のビジネスではなく、盛り上がるほどさまざまな企業に利益がシェアされるファンドや製作委員会方式に近い商売であるということです。

グループとしての売り上げはAKSに、ソロやユニットの活動(停滞気味?)は所属事務所にお金が入る形式。
AKSはAKB経済圏のPRを行うIP管理会社と言えるでしょう。

そのために大規模なイベントを行い、話題を提供し続けていると考えることができます。専用劇場も戦艦店ともいうべき、ブランディングの一種と考えるべきですね。

独自の経済圏を業界や関連業界全体に構築することで、一社集中ではなく、皆が利益をシェアするビジネスこそがAKBビジネスの巧みな点といえるでしょう。


戦略上の弱さ

AKBビジネスの弱さは人件費以外の損益分岐点の高さと常に話題を提供していかなければならない経費にあると感じます。
アイドルを所有しないことで固定費としての人件費が圧縮されたものの、
独自の経済圏の維持はブームの維持であり、人気の低下で利益が一気に落ちる傾向が強い構造になっていると推測します。

大規模なイベントや大きな会場でのコンサートなど、企画に対しての費用は莫大な一方で、関連グッズにおいては製作委員会方式で各プロダクションと利益配分になっている可能性があります。

他のアイドルグループと比べると売上重視で利益率が低いビジネスであることは否めません。
小さく高利益率で回すビジネスではないため、人気の維持にお金をかけなくてはなりませんが、世の中は次第に話題に対して食傷気味となり、反応は薄くなるでしょう。

株式市場における仕手株に反応しなくなる現象と似ています。


※系列アイドルを増やし結果、全てのアイドルを芸能事務所に移管させることは難しくなり、無名なアイドルほどAKS所属となってしまっている傾向もみられる。
所有しない戦略は変更しつつあるのか。



資本関係

調べていて興味深かったのが、NMBに関しては芸能プロダクションの吉本HDと京楽で所有されているという事実です。
SKEは現在はAKSですが、かつては京楽の子会社が運営しており、
京楽の影響力が非常に強くなってきています。
(京楽はAKBの版権で1000億以上売り上げたといわれています。)

京楽はAKB経済圏の中で、最も利益を上げた企業であると共にキャッシュを持っている企業といえるでしょう。
この京楽の動向がAKSそして、AKBに与える影響も無視できません。

ハロプロの戦略


ハロープロジェクトは、90年代後半から2000年代に社会現象になった、モーニング娘。を柱とするアイドル集団です。
そのハロプロアイドルたちが所属するアップフロントの戦略は「内製化」にあります。

アップフロントは日本有数の音楽事務所。
複数のレーベルを持ち、音楽の作成から提供まで流通以外は自社でまかなえる強みがあります。
楽曲の提供も2015年までは所属のつんくによって作成されたものが9割以上を占めています。その結果、楽曲に対する利益率、関連グッズ等の利益率はAKB系列を上回ると推定されます。
(売上:AKB>ハロプロ 利益率:AKB<ハロプロ)

全盛期後のハロプロは、AKBの絶頂期にはマスメディアから姿を消しました。
そのことにより、メディア露出を中心とした戦略からコンサート中心で確実に稼ぐ戦略へとシフトしています。

少人数のスタッフとメンバーで行うライブハウスツアーや、大規模セットを必要とせず、使いまわしのきくホールツアーがメインです。
いずれもアリーナ等の専用のセットを必要とするコンサートに比べ経費が抑えられます。
専用劇場の代わりに地方のライブハウスやホールを代替にしたと言ってもいいでしょう。

ハロプロの強み

ハロプロの強みは老舗アイドルとしての確かなブランド力と人材の育成力にあります。

歌がうまくダンスができるアイドルというと今もハロプロというイメージです。
メディアから消えた後のコンサートを柱とした活動はアイドル本人たちのスキルアップにもなり、根強いファン層を獲得。
(個人的な意見だが、実力という要素とそれらを作り上げていくトレーニングの仕組みは簡単にはまねできない)

また、楽曲の豊富さとハロプロらしさはつんくが作り上げてきた音楽面でのブランド価値になっています。

変化するアイドルグループ(モーニング娘。とアンジュルム) 変化せず、成長を提示したアイドルグループ(℃-uteとBerryz工房)など
うまい!と思わされるアイドルのポートフォリオが作成されています。
近年は新しいグループが誕生しているようですが、アップフロントは小さく生み大きく育てるのが得意な事務所です。

作り上げてきたハロプロというブランド力で初期においても一定数のファンを掴む。厳しいといわれるアップフロントのトレーニングでアイドルのプロとなる歌唱力とダンスで人材に投資する。
費用のかからないライブハウスツアーからスタートし、利益率の高い関連グッズと合わせて確実に黒字をだす。

成長すれば、より大きな舞台へと進むというストーリーは
アイドルにとっても事務所にとっても利害が一致します。

また、アップフロントはモーニング娘。全盛期にメンバーが高納税者番付(今は廃止されていたが、かつては公示されていた)に乗るほど、
アイドルに対しての報酬が高い事務所として有名。
所属メンバーのモチベーションにつながります。
(その分、人件費はかかります。)

音楽事務所という強みでアーティストとしての稼ぎ方とアイドルの稼ぎ方をハイブリッドした仕組みが今のハロプロの強みです。
アイドルという一過性のビジネスを約20年間続けてきた仕組みは侮れません。


新人アイドルでもベテランアイドルでも利益を出せる戦略と、人材の育成方法、財産といえる楽曲の豊富さは真似ができない要素です。
流行に左右されないアイドルビジネスを構築できているのはアップフロントとジャニーズ(ビジネスとしては別格)くらいでしょう。

アップフロントの弱み

自社に利益が集中する構造はAKBのように利益をシェアするビジネスとなっていないため、アップフロント以外にうまみが少ない状況です。
実力で獲得してきたファン層以外の一般層、特に低年齢から高年齢までに支持を広めるにはマスコミの活用は不可欠です。
ハロプロの過去の全盛期を知らない世代が多くなっているからこそ現行のメディア戦略の弱さがアップフロントの弱みといえるでしょう。(ネットで調べた限りでは、AKB全盛期は禁止されているのかというくらいハロプロがテレビ東京(ASAYAN時代から提携関係にある)以外のメディアで取り上げられる事がなかったそうです)

実力のあるアイドルを育成するための先行費用や、人材の確保の難しさも弱みであるかもしれません。

まとめ

AKBもハロプロもともにビジネスとしてはかなり高度な仕組みで成り立っています。
その戦略が逆の発想のもとに回っていることが非常に興味深い。

①AKSはアイドルを人件費として捉え切り離し、アップフロントは利益を生み出す資産と捉え高い報酬を出す

②売上重視のAKSと利益を出すこと(損失を出さないこと)重視のアップフロント

③話題性の提供のため、広告やイベントに巨額の先行投資を投じて回収するAKBと、
先行投資をせず、実力に見合う規模のコンサートを行い、石橋を叩いていくハロプロ系。


株の世界で表すならば、
AKSは成長性が高い業績が伴った成長株
アップフロントは利益率が高く資産が豊富なバリュー株といったところでしょうか。
※アップフロントは2015年の決算官報で利益剰余金が約300億あることがわかっています。
全盛期のモー娘の利益で一等地に不動産買っていたそうです。(今ではかなり値上がりしてますね)

seityoukabu.hatenablog.jp