相場から追放されたサラリーマン投資家のマナオです。
葬儀業界に続いて、ブライダル業界全体としての分析となります。
葬儀ときたら結婚式でしょう!という安易な発想(笑)
結婚式場運営の上場企業を分析し、激変するブライダル業界の栄光盛衰を振り返ります。
ブライダル業界の市場規模
少子化やシングル層の増加に伴いブライダル業界は衰退産業であることは間違いありません。しかしながら現状でも1兆4000億円程度の規模を誇っています。
ここからはエスクリ(2196)の資料を引用します。
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/21960/fe4fe28f/2d15/46ca/b0d5/a2421aa48509/140120150130015140.pdf 平成27年3月期第3四半期 決算説明資料
喫茶店と同じだけの規模を持ち、業界において独占的なガリバー企業が不在。つまり、まだまだ企業として成長が可能である業界であることが示唆されています。
結婚式場のスタイル
現在大きく分けて4つの式場スタイルがあります
◆ホテル
宿泊、宴会、レストランなどの複合施設のため、施設設備が充実している(エレベーター、駐車場、バリアフリー、多機能トイレなど)。また、テナントとして美容室や写真室などを持つ。
◆専門式場
結婚式を専門に行うために造られた会場で、挙式会場や披露宴会場を同一施設内に複数併設。日本庭園を有する歴史的なところも多く、日本のウエディング文化を牽引してきた。
◆レストラン
通常はレストラン営業をしている店を貸切、結婚式を行う。披露宴準備を持たないレストランは事前にケアが必要だが、最近では婚礼を前提とした所も登場している。
◆ゲストハウス
ヨーロッパ邸宅のような一軒家を貸切するウエディングスタイルを提案。ほとんど2000年代からの新しい会場タイプのため、カップルのニーズにマッチした施設設備がそろっている。引用マイナビ ウェディング
www.escrit.jp 引用元 エスクリ 平成27年3月期第3四半期 決算説明資料
専門式場・ホテル・ゲストハウス、この3つがそれぞれ3000億~4000億程度を占めており、綺麗なバランスになっています。
レストランも8%ということで主に小規模な結婚式等で活用されているようです。
テイクアンドキヴ・ニーズ(T&G)4331
結婚式場を柱とする企業は2000年頃から誕生したゲストハウス方式によって大きく業績を伸ばしてきた経過があります。
ホテルと専門式場のシェアをこのゲストハウスが一気に奪ったという状況。
このゲストハウススタイルのパイオニアで成長株として一気に注目されたのが
T&G(4331)でした。(過去形)
全国に欧米風のゲストハウスを建てまくり、毎年急成長する。
このままだと営業利益で100億いくんじゃないかと期待された矢先に問題は発生しました。
謎の赤字転落です。
T&Gの赤字が個人投資家に与えた衝撃はかなり大きく、20000円以上あった株価は急激に暴落しました。
T&G決算書類から作成
このT&Gショックが与えた個人投資家のブライダル業界へのトラウマはいまだに根深いと思います。
2016年2月時点での株価は400円代。
引用元ヤフーファイナンス
T&Gの急激な成長と急降下の裏には当時、同様に絶好調だった不動産流動化ビジネスが絡んでいたと言われています。こちらもサブプライムで一気にバブルがはじけました。決算文書等ではマネジメントや成約率の問題と書かれていましたが、同業他社の状況を考えるとあまりにも急成長、急降下したのでいまだに不思議。
初期に建てられたゲストハウスほど立地条件的に不便なところにあり、宿泊施設を確保するのが難しいために成約率が下がったのではないかと言われています。
無論、駅から近いゲストハウスなどもあり、そういったところはまだまだ根強い人気を集めています。
エスクリ(2196)
ブライダル業界でも新興に入るであろうエスクリです。
管理人・マナオは上場直後からビジネスモデルに惚れて購入していました。
エスクリのビジネスモデルのキーワードは駅チカです。
サブプライム・リーマンショック後の賃料の低下に合わせて
都市部の駅チカ物件や駅の商業ビルの最上階などに式場を次々と作っていきました。
T&Gが非日常感のスタイルだったのに対し、エスクリは「新しくて駅に近い」を武器に業績を上げていきました。
遠方の親戚も呼びやすいというのは大きなメリットですよね。
T&Gとエスクリは全く違う方向性で反比例するかのように業績が変化していきます。
投資家目線でエスクリの動向をさらに分析
しかしながら、どうしてもブライダル業界は規模を拡大しすぎると人材が間に合わなくなるのか成約率が下がります。
2015年に攻めの投資に出たエスクリは売上は上がるものの利益が大幅に下がる状況に陥っています。
いままでの都心の駅チカ重視と合わせて地方都市への展開(M&Aや事業譲り受け)を行い、一気に規模を急拡大させました。
その結果、ブライダル業界において最も売上が集中する10月~12月に売り上げを想定より伸ばせずに下方修正を余儀なくされました。(人材のマネジメント不足か。)
駅チカという強みは今後も残ると思うので積極的な投資を控える来期には利益はかなり改善されると思います。しかしながらこの業界にはT&Gの急失速の記憶もあり、エスクリの株式市場の評価は下がっています。
投資対象という視点で見る場合には1年後の第3四半期(10月~12月)決算以降からでしょう。業績と共に株価もV字回復するとよいですね。
(春から夏にかけての四半期は赤字を計上することが多い業種のため)
☆投資家目線でエスクリに関して補足
例年2施設くらいずつ、都心部で式場を開業してきたのが今期は都心4施設、地方9施設も開業させました。
地方の収支が追いつけば問題ないのですが、あまりにも急な規模拡大でさすがに人材も足りなければ費用もかさみます。
ブライダル業界は予想以上に従業員の質の高さと成約率が密接になっているので、その問題が解決できれば回復できるでしょう。(駅チカを中心に)
ただ、人材やマネジメント不足による業績の悪化という文言はT&Gでも使われてきた常套句ですので、実績で証明しない限りエスクリへの疑念は晴れないと思います。
(来期の第3四半期で好業績を示せれば、エスクリは再度成長株に確変する可能性はあります。)
最後に・・・
ブライダル業界はブームやトレンドに乗ると一気に売り上げを伸ばします。
しかしながら一気に落ちる傾向も上場企業の業績から見受けられます。
円高によって数年前から海外での挙式ブームが起きましたが現在は円安。
これからは小規模の結婚式やよりオーダーメイド感の出せる自由度の高い結婚式スタイルがトレンドになりそうです。
オーダーメイド式のスタイルが流行るとなるとそれだけ人材の育成が重要になるので、これからは人への投資がポイントになるかもしれません。
業界全体に対しての投資タイミング
結婚式場運営企業の多くは最近ホテル運営へ進出しています。これはシナジーがあるだけでなく、通年で利益が出せる状況を作り出す戦略なのでしょうか。
何度も繰り返しますが、このウエディング業界はあまりにも売上が一定の季節に偏ります。株式市場で評価が高く、今期50億以上の利益を出しているツカダ・グローバルHD(2418)でも第1四半期は赤字です。
どうしても中長期で持ちづらくなるため、投資するにしても10~12月が反映される四半期の決算以降となりそうです。
地味ですが比較的割安で成長性がある企業も見受けられます
アイケイケイ(2198)やノバレーゼ(2128)など。